「犬の問題行動と言う表現」
ドッグトレーニングを長くやっていると、よく「犬の問題行動」と言う言葉を耳にします。一般的には、犬の行動により人が迷惑と感じることを総じて「犬の問題行動」と表現する場合が多いようです。例えば、家具をかじる、飛びつく、トイレの失敗、唸りや噛みつきなど、犬の不適切な行動がこれに当てはまります。
「犬の問題行動」と聞くと、「犬が悪い」「犬のせい」と感じる方も、正直、少なからず居るのではないでしょうか? 果たして、これらの犬の不適切な行動は、本当に犬側だけの問題なのでしょうか? この言葉の先入観により、多くのドッグオーナーさんは犬の行動を誤解をして、トレーニング成果が上がらない状況が発生している場合もあります。「犬の不適切な行動は全て犬のせいで、私は悪くない」なんて思ってしまうのかも知れませんね。
私の考えは、「人の問題行動(誤った教え方や間違った接し方)によって作り出された、犬の誤解した不適切な行動」です。そう!「犬の問題行動」ではなく、むしろ「人の問題行動」と言う解釈なのです。
例えば、飛びつきについて解説してみます。
犬は大好きなあなたに触ってもらいたい、抱っこしてもらいたい、敬意を表して口元を舐めたいなど、あなたとの関係を密接に持ちたがります。仔犬の頃は大してジャンプ力もなく、膝元に前足をあげる仕草がとても可愛く感じていたのではないでしょうか。頭の中では、「ジャンプはさせないように」と、わかってはいるものの、「よしよし、立ち上がったらいけないよ」となだめながら、仔犬の頭や身体をさすって前足を床にそっと下し、再度、よしよし、と褒めてあげます。
しかし!そもそも、愛犬に対するこの行為が、犬の飛びつきを強化してしまっている原因なのです。 前述のとおり、犬はあなたと密着したいから前足を精いっぱい伸ばして、そのことを伝えようとします。しかし、あなたは頭の中では「飛びつき癖を付けさせてはいけない」と分かっていながら、犬の身体をさすり優しい声で対応してしまいます。この時、愛犬は前足をあげたら身体を触ってくれて話しかけてくれると理解し、よりあなたに褒めてもらおうと一所懸命前足を伸ばしあなたと接しようとします。そして成長とともに、より高い位置へと近付こうとする行動が飛びつき癖になるのです。
もしも、立ち上がって前足を伸ばして来る仔犬に対しては、くるっと振り返り愛犬とは接しないようにすることを心掛け、愛犬が四肢を床に付けている時やオスワリしている時にだけ、たくさん触って褒めてあげる行動を取れば、基本的には仔犬は成長しても飛びつきの癖は付かなかったはずです。
今現在、犬の誤解した行動でお困りのドッグオーナーさんを責めるつもりはありません。むしろ、愛犬との誤解を解消して、より効率的で楽しいトレーニングを実行していただきたいと願っています。
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